ジェネラリストの成長術
世の中、「働き方改革」や「人生100年時代」という言葉が働いている人だけでなく、全国民に知れ渡るような時代になりました。 このような言葉が世に広まることになったのはこの本の影響も大きいかもしれません。
- 作者: リンダグラットン,アンドリュースコット,池村千秋
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 単行本
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有名な書籍なので一度はタイトルを耳にしたことや書店で目に入ったことがあるかもしれません。 ちなみに著者のリンダ・グラットン氏はもう1冊こんな本も書いています。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: ハードカバー
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この本では
「2025年には"広く浅い知識や技能を蓄える"ジェネラリストは通用しなくなる」と言っています。
どうでしょう? この言葉にドキッっとしたり、思わず姿勢を正した方もいるのではないでしょうか?
ただ、私が思うにジェネラリスト自体には悪いことではないと思いますし、一種の才能です。 なんでもある程度は器用にできてしまうというそれもまた誇れることです。
では、来たる2025年をジェネラリストがどう成長して迎えるべきかを私なりの感覚で紐解いていこうと思います。
コンプレックスから始まるジェネラリストへの道
ジェネラリストとよく対比される言葉に"スペシャリスト"という言葉があります。 この言葉のイメージは、
- 特定の仕事の分野に特化して作業を行う人
- 一芸に秀でた人
- 職人、専門職
- この分野はこの人に聞け!
と言ったものではないでしょうか? ともするとそのコミュニティーやチームにおいての"(特定の分野において)一番知識や技術がある人 "がそう呼ばれていることが多い気がします。
つまり、裏を返すとスペシャリストは「1つのコミュニティー、チームにおいて各分野で一番の人」ということが多い気がします。
では、各チームやコミュニティーにおいて、必ずしも自分が一番である分野が見つかるでしょうか? 本当はあるんだと思います。ただ、必要とされる技術や知識においては必ずしも"全員が「私はxxのスペシャリストと自負すること」は難しいと思います。
これは一種の負い目であったり、コンプレックスと言い換えることができるかもしれません。
ただ、これはジェネラリストが生まれる予兆とも言えると思ってます。
Coverage & Fill the gaps
自分はスペシャリストとしての知識や技術がまだ足りないと感じた時にどういう行動をするでしょう? 私が思うにジェネラリストに共通するのは
「自分にできることはなんでもやりますよ!」
という姿勢と行動だと思います。 具体的にはこんな感じでしょうか。
このチームで仕事を進めていくと・・・
ということが起こり、
ということが多い気がします。
これを仮に"Fill the gaps"と定義します。
はじめのうちはこれでいいと思います。 というのも、このような隙間が見えてくるのは
"チームが組成され、各々のスペシャリストの守備範囲がわかってきた頃" に見えてくる問題だからです。
その段階ではジェネラリストはまだ忙しくありません。 なんなら、そのGapが見えてからでないと埋められないので、そこからが出番です。
ジェネラリストの仕事分類
では、ジェネラリストがカバーする仕事内容はどんなものがあるでしょうか? これは前述の通り、そのチームにどんなスペシャリストがいるかにもよりますが、 例えば・・・
- 社内との調整役
- 会議の日程調整
- 契約書の作成、チェック
- 営業のフォロー
- 問い合わせ対応
- チームのコンディション管理
- 緊急時の増員要員
などなど、色々あると思います。
ただし、お気づきでしょうか?この仕事は2つの分類に大別できます。
- みんながやりたがらない、誰でもできること
- その分野のスペシャリストがいないからカバーしていること
ここがジェネラリストの成長に置ける重要なポイントです。
というのも、「なんでもやります!」からスタートしているので、 この2つの仕事が来ることは当然です。そして、ジェネラリスト自身も全然苦じゃないパターンが多いです。
ただし、問題はこの先にあります。
「ジェネラリストは忙しそう」問題はなぜ起こるのか
ジェネラリストの仕事はスペシャリストの仕事とは異なって「見えづらい」または「気づきずらい」ことも含んでいます。 というのはスペシャリストは「この分野はこの人!」とわかっているので、やっていること=得意なことという意味でその仕事量も見えやすいのに対し、 ジェネラリストは「それ以外全部!」というと
- そもそも全体量が見えずらい
- 得意じゃない、やったことがないこともやっているから作業時間の見積もりが立てづらい
ということで「なんかわからないけど忙しそう」という状況が生まれてしまいます。
そして、一方で「いつの間にかある分野のスペシャリストになっていることに誰も気づきません」
ここでジェネラリストの仕事分類をもう一度見てみましょう。
- みんながやりたがらない、誰でもできること
- その分野のスペシャリストがいないからカバーしていること
そうです。後者をやっているうちにいつの間にかその分野のスペシャリストになっているのです。
「いやいや、世の中的にはもっと得意な人いるだろうよ」という言葉もあると思います。 では、スペシャリストはどんな人がなりがちかを見直してみましょう。
そうです。このチームにおけるスペシャリストはそもそも"このチームで一番"ということしかわかっていないのです。 つまり、すでにスペシャリストとしてチームで働いている人も外の世界のものさしでは図られていないのです。
ジェネラリストが忙しくなる理由はもう一つあります。
前述の通り、すでに何かしらのスペシャリストになっているがゆえに他のチームや他の業務からもその分野を頼まれます。 当然のことですよね?
ただ、スペシャリストとジェネラリストには大きなメンタルモデルの違いがあります。 それは「自分がスペシャリストではない」というコンプレックスです。
それがある行動につながります。
「なんでもやります!」
自分が忙しくても受けてしまいがちになるのです。 そして、忙しさがまた忙しさを呼ぶのです。
つまりこういうことです。
ジェネラリストの成長危機
このような状態になってしまうとどうでしょう? ジェネラリストはただただ、仕事が増えていく一方です。
ですが、厄介なのは「なんでもやります!」の精神と「自分はスペシャリストではない」というコンプレックスです。 つまり、この状態に陥っているジェネラリストは"自分ももうスペシャリストなんだ"ということを自覚するべきです。
そして次に起こる問題が時間管理です。
「なんでもやります!」を続けてしまうと、1日の限られた時間で収まらなくなります。 そうするとどうなるでしょう?
こうなりますよね?
では、限られた時間で「なんでもやります!」を続けると・・・
ただの雑用です。いいように使われている状態といってもいいかもしれません。 そして、自分の分野が確立できていないので、成長の幅も小さくなってしまいます。
なので、
こうしたいはずです。
しかし、世の中そんなに甘くありません。 「誰でもできる仕事」は大抵「大事な仕事」です。やめられないものも多くあります。
さて困りました。
ジェネラリストの成長の鍵
一定数ある「誰でもできる仕事」。これをどうするか。 実に単純な話ですが、「他の人に任せてしまいましょう」
なぜなら、こうなっている時点でもうスペシャリストです。 ということはこのチームにいる人はみんなスペシャリストになっているということです。
つまり、誰か一人が背負うことはないのです。みんなで少しずつ分け合えばいいのです。
しかし、ここにもそれを妨げる要因があります。 それは・・・
「ジェネラリストは器用である」
ということです。
ある分野で100点は取れないとしても、それぞれの分野で平均点は取れる人だからこそ、 "自分でやったほうが早い"という事態に陥りがちです。
そして、任せてみて失敗されてしまうと「やっぱり自分がやったほうが・・・」とまた巻き取ってしまいます。 それは一種の優しさかもしれません。
ただ、振り返ってみましょう。
自分でやってしまうことでその仕事は片付くかもしれません。 ただ、成長のために使う時間が著しく減っています。
ジェネラリストが見せる優しさがジェネラリスト自身の成長を妨げています。
つまり、ジェネラリストの成長の鍵は「信じて任せる」ということなのです。
ジェネラリストは連続スペシャリストへ
最後にもう一度、書籍「WORK SHIFT」に触れてみましょう。 この本は「2025年にジェネラリストは通用しなくなる」と言って見放しているわけでありません。 その続きとして、「ジェネラリストは連続スペシャリストになることが必要」と言っています。
つまり、それはここまで述べてきた
- 「なんでもやります」から「自分にしかできないことを見つける」
を何度も何度もサイクルとして回すことで、得られる道だと私は思います。
ジェネラリストは大抵がなんでも無難にできる器用な人です。 だからこそ、「信じて任せる」ことで自身の成長の鍵をつかむことが必要だと思います。
偉そうに述べてきましたが、実は、私自身の置かれている状態が今こんな状態かなと思っています。 だからこそ、自分に言い聞かせるとともに同じ境遇の方の参考になればと思います。