きっと、うまくいく~非IT業界をスクラムで変えるための系譜~

一人のPO見習いが業界を変えるために奔走する様子をただただ綴るブログです。

チームビルディング研修を行いました。

春は出会いの季節ですね。

新年度になり、部署の再編成や配置転換、新入社員の入社など、新たな仲間と出会う季節です。 新たなチームを形成する機会や必要性が高まるのも必然だと思います。

そんな折、部署の新卒入社向けの研修依頼があり、 それを聞きつけた他部署からも「うちの新人にも・・・」

さらには、「新人以外も参加して良いか?」

という問合せがあり、25名に対して8時間の研修を行いました。

季節柄、そんな以来や機会があり「何をしよっかな」と迷ってる方々もいると思うので、 このエントリーで私がどんな準備をし、何を行なったのかシェアしたいと思います。

考えたこと、準備

まず、今回は新卒社員向けを考えていたので基本的にはそれぞれの心と対話する時間にフォーカスしようと思いました。 というのも私の中での新卒教育にはある程度思いがありまして・・・。

※ 詳しくはこちら  

www.slideshare.net

ですが、開催2営業日前(月曜開催なので、前の週の木曜日)に参加者リストをもらったところ・・・

「なにー!!半分が新卒じゃない!!?(・_・;?」

という感じでした。 もともと「チームビルディング研修」と銘打っていたことから、「新卒以外もいいですよー」といったものの半分が新卒以外。 それもベテランもいる。

どうやら部署再編に伴う本部長のチェンジにより、その本部長(私をよく知る)の要望で「是非とも参加してくれ」とのことだったみたいです。

まずここで、どんなことが期待されているのか、どんな姿勢かを改めて整理しました。

  • 新卒社員 : これから仕事をしていく上での考え方、礎となる知識、モチベーション、困った時に相談できるパス作り
  • 先輩社員:今までの常識の打破、初心に帰って学ぶ、ありきたりな座学では満足できない、「よくある研修だろ?」と斜に構えている

と考えた時に

  • 年次やキャリアに関係なく普段忘れてしまっている感覚に気づける。そして、先輩社員は日常で、新卒社員はこれからぶつかるであろう壁へのリアルな対応

といった点を主軸にすることにしました。

全体尺は7~8時間。この1日の中で一貫した"チームビルディング"というテーマに対する変化を加えることも考え、手札となる自分の知識や経験からワークを考えました。 そして、ただ楽しいだけのワークでは先輩社員の目は誤魔化せません。 ということで、ワークの背景にある考え方や心理を伝える時間も随所に設定しました。

ただそれだけでは一方的なInputの1日になってしまいます。 そのため、随所で気づきの共有や振り返りの時間(今回はFun/Done/Learnを採用)を設けることでそれぞれの内省の時間を取ることとしました。

当日準備時の心理

まず、当日はいわゆる"コの字型"の配置とし、前にホワイトボードを置き、リアクションや雰囲気を見て必要そうな情報を与えるスタイルにしました。 というのも、場の状態や参加者の知識量に応じて柔軟に対応するためには事前に用意した資料以外の情報を引き出しから引っ張り出す必要もあり、そのようなホワイトボードを主軸としたスタイルにしました。

まずやったことはホワイトボードに

""好きな"ところに座ってください(前から順番じゃなくてOK)"

としました。 これにも意図を込めています。

"コの字型"の配置の後ろにも机が数列あり、参加者がどこに座るのか("コの字"の中か、はたまた後ろか)によって参加者の開始前のモチベーションを測りたかったという意図があります。 また、接触的に前方に座る参加者がどんな人かを把握することで、"場の空気を作る"上での仲間を見定めたかったという意図もあります。

自己紹介とコンセプト、ゴールの説明

そして、まずは私のバックボーンや今日のコンセプトを説明しました。 自己紹介の中で強調したことがいくつかあります。

  • 社内外で「映像業界をチームで働く業界にしたい」といって活動している → 所在の明確化
  • 外部でファシリテーションを学んでいる。ワークショップを行なっている → 経験の明確化
  • 新卒入社の生え抜き → 立場の明確化

です。これにより

  • 経験が浅い若造のやること (どうせ当たり前のことをやるんだろ)
  • 自分たちと違う世界から来た人のやること (だから、自分たちには無理)
  • なんでこんなことするのかよくわからん。暇人なのか?

という先入観を最初の自己紹介で払拭することができました。

そして、何よりフランクな表情や口調で笑いを取りながら

「今日はお堅い研修ではなさそうだぞ?」

という期待を生み出すことに努めました。

次にゴール、コンセプト、進め方の共有です。 ゴールは"チームってなんだろうを自分なりに考えられること"としました。 そのため、

  • 「僕が答えを持っているわけではありません。教えることもしません。自分で考えるヒントを与える立場です」

というお話をしました。

進め方に関しては、チームを考える上で

  • 1人 → 3人 → 5人

という形で人数を増やしながらチームというものを実感してもらえるような構成にし、全体で繋がりのある内容としました。

集団の中の個人に気づくワーク

午前は"1人"にフォーカスしました。 具体的にはアイスブレイクも兼ねて"コの字"の真ん中で システムゲーム をすることから始めました。

ワーク1:システムゲーム(等間隔)

  1. 全員立ち上がり円になる
  2. 誰にも言わずにターゲットを2人決める
  3. 「スタート」の合図で止まらないように動き回る
  4. 動き回るときにターゲットの2人それぞれと"常に等間隔の距離である状態を保つ"
  5. 「ストップ」の合図で全員その場に止まる
  6. 等間隔であるかを確認する

これにより、

  • 一人一人のそれぞれが影響し合っていること
  • 自分の動きが知らないうちに影響を与えていること
  • 影響ばかり考えていると物事は自然に停滞をしてしまっていくこと

などを可視化できます。

ワーク2:システムゲーム(一人の影響)

次にさらに一人一人が絵どう影響しているかを可視化するワークをやりました。

  1. 全員立ち上がり円になる
  2. 誰にも言わずにターゲットを2人決める
  3. 「スタート」の合図で止まらないように動き回る
  4. 動き回るときにターゲットの2人それぞれと"常に等間隔の距離である状態を保つ"
  5. ファシリテーターが"1人だけ"の肩をたたく
  6. 叩かれた人は5秒経過したらその場にしゃがみこんで停止する
  7. 他の参加者はターゲットのいづれかがしゃがんだのを確認したら、5秒後にその場にしゃがみこんで停止する

これが不思議なことに(ほとんどの確率で)1人しか肩を叩かないのに最終的には全員がしゃがんでいるという状態ができます。

これにより、先ほどの気づきに加えて、

  • どんなに大きな組織でも1人の影響が全体に影響する

ということがわかります。

では、これをそれぞれのチーム、部署、組織、業界、はたまた世界に当てはめるとどうでしょうか? 自ずと答えは見えてくるはずです。

と、ここまでで一人一人の影響力を可視化するワークをやって来ました。 一人一人の影響力が大きいということは行動だけではなく、発言や表情も同じです。

我々は一人で完結できる仕事は少なく、何かしらのコミュニケーション、特に対話を行なっている場合が多くあります。 この対話においても自分のふとした行動が予期しない影響を与えています。 次はそんな状態を可視化するワークをしました。

ワーク3:動きの伝言ゲーム

  1. 全員が縦一列に並び、前を向く
  2. 一番後ろの人の肩をファシリテーターが叩く
  3. 肩を叩かれたら振り向く
  4. ファシリテーターが動きを伝える(今回は2回やり、野球の動きの回とかき氷の回をやりました)
  5. 動きを理解したら、受け取った人が次の人の肩をたたく
  6. 次の人が振り向く
  7. これを最後まで繰り返す

これがかなり盛り上がります! 明らかに動きがうまく伝わらなくなって来て最後にはめちゃくちゃなものになっています。

面白いのが自信がなさそうに首を傾げながら伝えるとそれも動きの一部と捉えてつ当てられてしまいます

これにより、

  • 情報を伝える時の正確さ
  • 自信や表情は自分が思っている以上に相手に伝わっている
  • 頭で理解して、修正をしてもそれが答えとは限らない
  • 受ける側、伝える側の経験によっても伝わる粒度が違う
  • 複雑な内容はだんだんと削ぎ落とされていくのでシンプルに伝える

ということの重要性が可視化されました。 これで午前中は終了です。

3人対話を深める

午前中は影響力と伝え方の重要性を体感してもらいました。 次に行ったのはより具体的な対話を掘り下げることです。

まずは3人チームを作ります。

参加者はみんな大人なので自由にスカウトしてもらうことにしました。 ここまで自己紹介は行なっていませんが、

  • 各ふりかえりの発言が面白い人
  • 話したことない人

を軸に自由に3人組を作ってもらいました。

3人組ではまず、アイスブレイクのワークをしました。

ワーク4:アイスブレイク

[ルール] * みんなが均等に話す(一人が話しすぎたり、話さなすぎたりしない) * 話が終わったら拍手 * 相手が話しているときは聞くことに集中する(自分の話すことを考えない) * 相手を急かさない

これらのルールのもと、

  1. 「まんざらでもない話」
  2. 「実は私・・・」

という話を30秒めどにぐるぐる回す。

これには明確な意図があります。

  • 「実は私・・・」というプライベートな話に入る前に「まんざらでもない話」でお互いの距離感を近づける
  • 「実は私・・・」によって短時間で心理的距離感を近づける
  • 均等に話すことで心理的安全性を高める

 ※ 均等に話すことと心理的安全性の因果関係はここから来ています。

gendai.ismedia.jp

そして3人のチームが温まったところで対話について深めるワークをしました。

ワーク5:対話のワーク(内容と感情)

  1. Aさんが1分間ストーリーテリングをする(今回は「子供の頃好きだった場所」について)
  2. この時にBさんは「内容について」、Cさんは「話している人の感情」にフォーカスして聞く
  3. Bさんから"内容について"正確に伝える
  4. Cさんから"感情について"正確に伝える
  5. 役割をローテーション

これにより

  • 内容を正確に伝えてもらうことによってAさんの承認欲求に気づく
  • 感情を伝えてもらうことによって自分の気づかなかった感情に気づく
  • 自分が思っている以上に仕草や目線で感情が伝わっていることに気づく

という意図があります。 次に、心理的安全性の側面から

ワーク6:対話のワーク(感情と向き合う)

  1. ファシリテーターがA~Cさんを順番に呼びミッションを伝える(Aさん:感情むき出しでストーリテリング、Bさん:全力で肯定、Cさん:全力で否定)
  2. Aさんが1分間ストーリーテリングをする(今回は「私の嫌いなもの」について)
  3. Bさんから感想を伝える(全て肯定)
  4. Cさんから感想を伝える(全て否定)
  5. 日常に置き換えて、感想をディスカッション

午後のメインテーマはこちらのワークでした。

  • 自分は普段どんな状態だろうか?
  • 普段こんな会議はないだろうか?

などの側面からディスカッションを進めてもらいました。

そこで上がったのが

  • AさんはBさんのような人がいると心地よくて話しやすい
  • ただ、上っ面の肯定だと逆に嫌だし、それが見抜けてしまう
  • CさんがいるとAさんは萎縮してしまう。
  • Cさんは内容だけでなくAさんの人格も否定してしまいそうになる
  • ただ、Cさんは話を聞いてるからこそ反論できる。そういう存在はありがたい

というものでした。

議論の途中に新キャラクターとして"無関心で何も言わないDさん"という登場人物を増やしてディスカッションを進めてもらいました。

  • 一番いっぱいいる
  • 自分も場合によってはそうなりがち
  • Dさんは議論の速度についていけなくなって話せないだけかもしれない
  • 意図的に黙っているDさんもいる
  • どちらにせよ、Aさんからしたらどう思っているかわからないから一番不安
  • Aさんだったら、Dさんがどう思うか意図的に聞いたほうがいい
  • その上でDさんの立場を明確にすることが必要
  • ただ、DさんはAさんを不安にさせないためにも何かしら伝える努力は必要そう

といった形でかなり建設的なやりとりができました。

この2つのワークで

  • チームの中でどんな立場でどんなことをするときも相手のことを考え流ことが大切
  • どの立場が良い悪いというよりも今の自分がどういう傾向かを把握することが大切

といった気づきが参加者の中で生まれました。

5人のワーク(価値観と向き合うこと、チームで仕事を進めること)

3人に続いて、5人のチームづくりも各人のスカウト方式にしました。 もうここまで来るとみんな慣れたものです。

5人でのアイスブレイクは

ワーク7:見えない共通点探しとチーム名決め

  1. 全員の目に見えない共通点を探す
  2. それを元にチーム名を決める

というものです。

これは以前とある5分間のLTで実施してみた際のエントリーがあるので、意図などはこちらにあります。

passionate-po.hatenablog.com

そして残すは価値観ババ抜き、マシュマロチャレンジです。 これも過去記事に詳しく書いています。

passionate-po.hatenablog.com

passionate-po.hatenablog.com

最後は学びのふりかえりを行い、全て終了です。

ファシリテーターとしての感想

今回やっぱり一番気にしたのは「新卒社員からベテランまで幅広い参加者がいる」という点でした。 この全員が満足して帰ってもらうためには

  • ある一定以上の根拠のある理論
  • 自ら気づけるワークとふりかえりの時間

というところがベースにありました。

一方で、やはり"場"な生き物だなと感じたのは、 それぞれのディスカッションやふりかえりにおいて私自身が感じたことのない気づきも少なくなく、とても楽しく進行できました。

そして、Fun/Done/LearnのFunに

  • 「蜂須賀さんかフランクだからやりやすい」

という付箋もあり、影響力のワークをやりながらも私自身の影響ということも再認識できました。

最後に

最初にも書いた通り、この季節、多くの悩める研修担当者の方がいると思います。 是非ご意見やご相談あればディスカッションしたり、必要とあればお手伝いさせていただければと思います。

気軽にご連絡ください。

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